ただ今、政略結婚中!
「よくわかっているじゃないですか」


楽しそうな笑みを浮かべる彼を睨み返し、身体を反転させて隼人さんから離れる。


隼人さんが口を開こうとした時、入口の方でどよめきが起こった。


「ハヤト!」


その場にいた全員が振り返るほどの美しい女性が近づいてきた。


私にとっては二度と会いたくない女性が。


「エス」


隼人さんの表情から何も読み取れなかったけれど、口から洩れた「エス」に胸がズキンと痛みを覚えて顔をしかめた。


エステルが銀色のロングドレスの裾を揺らしながら近づいてくるのを隼人さんは見ている。


胸の部分がハート形にカットされたドレス。薄い生地から魅力的な膨らみが見える。


男性なら絶対にそこに視線がいってしまうほどセクシーな姿だ。


エステルは最高の笑みを振りまき、こちらにモデルウォークでやってくる。


別荘で別れた時、険悪な雰囲気だったはずなのに、そんなことはなかったようなエステル。


やっぱりジョンの言うとおり、仲直りしたのかも。


ここへ来るくらいなのだからそうなのかもしれない……。


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