ただ今、政略結婚中!
「ハヤト、シャンパンをちょうだいな」


彼女はあでやかな笑みを浮かべながら日本語で隼人さんに頼んだ。


隼人さんは近くを通りかかったウェイターからシャンパンを受け取り、エステルに渡す。


それを見てこの場から逃げ出したくなった。


エステルは楽しそうに大輪のバラが花を咲かせたような笑みを浮かべて隼人さんと話し始めた。


パーティーの出席者全員が興味津々で私たちを見ているよう。


その場から離れようとすると、隼人さんの手が私の腰に回った。


思わず隼人さんの顔を仰ぎ見る。


行くなということ?


エステルと楽しそうに話をしているのに?


だんだんと腹が立ってきて、強引に隼人さんの手を自分の腰から引き離すと、どこともなく歩いた。


ふたりが見えない所ならどこでもいい。



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