ただ今、政略結婚中!
「ここででいいです。隼人さんはパーティーに戻ってください」


俯いたまま言い、ドアを開けると中へ滑り込むようにして入った。


隼人さんは入ってこなかった。


今日のパーティーは仕事がらみだから、放りだすことが出来ないのは十分承知している。


髪に留めたコサージュを外しながら寝室に向かう。


ドレスを脱ごうとして、ドレッサーの鏡に映る自分の姿を見て動きが止まる。


遠まわしな言い方だけれど、この姿……褒めてくれたんだよね?


初めての夫婦同伴のパーティー、エステルが現れるまで隼人さんの妻だって感じられていたのに……。


遠いカンクンに来て、エステルから離れられたと思ったのにな。


今にも泣きそうな自分が嫌になる。


バカ亜希っ!隼人さんに心を奪われ過ぎっ!


想いを振り切るように乱暴にドレスを脱いでベッドの上に無造作に置くとバスルームに足を向けた。


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