ただ今、政略結婚中!
走る車に目を向けながら、ふと脳裏に新聞の見出しが浮かぶ。


『日本人観光客、カンクンで殺害される』


そんな恐ろしいことを考えてしまい、背筋が凍ってしまいそうになるほどゾッとなり、ガタガタと震える身体を抱きしめる。


隼人さん……。


隼人さんと話がしたくなくて逃げたのがバカだった……。


頬に涙が伝わり、手の甲でぬぐう。


歩くのも怖い。


このままうずくまりたい。


そうしたらどんな目に合ってしまうか分からないから出来るはずもなく、大きく息を吸い込むと歩き始めた。


とにかくタクシーを見つけてホテルに戻らないと。


「タクシーを見つけなくちゃ……」


そう呟いた時、男の叫ぶ声が背後でした。


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