ただ今、政略結婚中!
「隼人さんっ、大丈夫です。降ろして――」
「無理に歩くと腫れるかもしれない。車まで我慢しろ」


私の言葉をさえぎってニヤニヤするカルロスさんをしり目に隼人さんは車へと歩き始めた。


私を後部座席へ降ろすと、隼人さんはしゃがんで折れたヒールを履いていた足を指先で慎重に触れる。


「腫れてはいないようだ」


「もう痛くないです」


指先が触れる足首が別の意味で熱く感じる。


ゾクゾクとするようなこのままずっと撫でていて欲しいような……。


******


帰りの車では、車窓から暗くなる景色を見ながら眠気に逆らえずいつの間にか眠ってしまった。


隼人さんの肩に頭をもたせ掛けてしまったことなんて知らずに……。


車が停まった気配にぼんやりと目を開けた。


目を開けてびっくり、すぐ目の前に隼人さんの端正な顔があったから。


うわっ、隼人さんに寄りかかってた……。


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