ただ今、政略結婚中!
「あぁ、亜希さんにはつまらない話で申し訳ない」


思い出したように私に顔を向けて、そう気にかけてくれたのは誠也さん。


「いつも裕美にはつまらないと叱られるんですよ」


愛妻を思い出したのか、微笑みながら言う。


隼人さんは何も言わずに私を見ている。


目と目が合っても、隼人さんが何を考えていることはまったく分からない。


笑みすらないのが悲しい。


誠也さんくらい優しければいいのに……。


そこへ義母と裕美さんが戻ってきた。


後ろからワゴンを押す年配のお手伝いさんが付いてくる。


我が家とは桁違いのセレブだわ……。


社長令嬢と言われていたけれど、パパが倹約家だったから贅沢はほとんどしなかった。


それでも私には甘いパパで、欲しいものは何でも買ってもらえたけど。


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