ただ今、政略結婚中!
隼人さんに会ったのは10年以上前のこと。


彼が今どんな人になったのかわからない。


もちろんルックスはあの頃でもカッコよかったから今でもそうだろうと思うけれど……。


「犠牲と言われたら何も言えないが……2年ほど前に隼人君に会ったことがあるが、素敵な大人になっていたよ。彼と結婚すれば幸せになれると思うんだ」


私の考えを読んだかのようなパパの言葉。


「素敵な大人がどうして自分で結婚相手を見つけられないの?」


「仕事が忙し過ぎるせいらしい。彼は出来る男だからな。ニューヨーク支社を発展させた功労者でもある」


「いくら仕事が忙しいからって、ゲイじゃなかったら彼女くらい自分で見つけられるわ」


「亜希ちゃん!」


ゲイ発言にママが目をまん丸くして驚いている。


パパに向かって言う言葉じゃなかったかも……でも譲れない。


「それに私なんかと結婚なんてしたくないってきっと思うわ」


「そんなことないわ。亜希ちゃんは可愛いわ。きっと隼人さんも好きになってくれるわよ」


政略結婚ってこんなものなのだろうか……。


相手が気に入る、気に入らないにかかわらず結婚する。


双方の利点の為に。


でも、紫藤家は私を迎えても何の得にもならない。


紫藤不動産にとってプラスになる取引先の娘とか孫とか、相手ならたくさんいそうなのに……。









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