ただ今、政略結婚中!
「俺は……」


それだけなのに、心臓が壊れそうなほどバクバクして、息を呑みこんでしまう。


知らず知らずのうちに涙腺が弱まり、瞳が潤んでくる。


瞬きしたら涙が零れてしまうかもしれない。


私の顔を見ていた隼人さんはおもむろに立ち上がると、私の隣に座った。


隼人さんの行動に驚いていると、頬に温かい指先が触れた。


「はや――」


その先は言えなかった。


優しく唇を塞がれていたから。


「泣かないでくれ、もちろん泣かせているのは俺だとわかっているが……」


そう言って隼人さんは頬に伝う涙を指で拭ってくれる。


「愛している。俺が愛しているのは亜希だよ」


え……?


聞き間違いかと、隼人さんを涙で濡れた目で見つめる。


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