ただ今、政略結婚中！

隼人さんは思い出したようにフッと笑った。


「３０歳までに結婚しなければ、親父が決めた相手とする約束だった。そんな結婚うまく行くはずがないだろう？親父の勧める結婚話は断ろうと思っていたが、相手がお前だと知ってその気になったんだ」


「隼人さん……」


私だから結婚した……。


「でも、結婚式の日に初めて会って、その日にニューヨークへ戻るなんてひどすぎます」


あの時のことを思い出すと、恨み言の一つも言いたくなる。


「大事な取引があったんだ」


「……」


何も言えないでいると、膨らませた頬に隼人さんの指がそっとあてられた。


「すねないでくれ。悪いと思っていたよ」　


ふっと笑みを浮かべた隼人さんに、胸が甘く突かれる。