ただ今、政略結婚中!
施術がすべて終わった私は、サロンのテラコッタの床が美しい部屋に案内された。


すぐに女性スタッフが氷たっぷりのアイスティーにレモンを添えて持って来てくれた。


この部屋の大きな窓からも、キラキラ輝く海が見えて素敵なロケーションだ。


身体はリラクゼーションして、お肌はつるつる。


何もかもがバラ色に見えてもおかしくないのに、心の片隅に気になっていることがあって邪魔をする。


エステルとの関係を教えてくれた隼人さんの言葉がずっと気になっていた。


『亜希……俺たちの関係は愛がある関係ではなかった。ただお互いが性的欲求のはけ口に付き合っていただけだ……そんな男でショックか?』


隼人さんはそう言ったけれど、エステルは違うと思う。


隼人さんを愛していなければ、ここまで追ってこないはず……。


小さなため息が漏れる。


気にしちゃダメ、隼人さんの心にエステルにないだけで十分……そろそろ部屋に戻って支度をしよう。


立ち上がって部屋を出ようと立ちあがった時、ドアが開いて入ってきたその人を見て、私は声も出せないくらい驚いた。


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