ただ今、政略結婚中!
「こんな本、出すの止めてください!隼人さんを愛しているんでしょう?彼を苦しめるなんて!」


「ええ、愛しているわ。あなたも彼を愛しているのよね?それほど愛しているのならどんな犠牲も厭わないわよね?」


「犠牲?」


「本が世間に出たら、彼の人生はどうなってしまうかしら?有名モデルを捨てたレッテルを貼られて仕事がうまく行く?ふふふ、当分は無理ね?」


「……別れろって……ことですか?」


胸に激しい痛みを覚えて、右手が胸にいく。


「政略結婚で結婚したんだから簡単でしょう?あなたはたった1ヶ月ほどしか彼と過ごしていないのだから。お金が欲しいのなら、私があげるわ。だから別れて日本へ帰って」


「……」


「この本を読めば私達の歩んだ歳月がわかるわ。どうぞお部屋に持って帰って。ただし、ハヤトにばれないようにね?知られた場合、すぐに世界中の書店に置かれることになるわ」


そう言うと、テーブルに置かれた英語版の1冊だけ彼女はバッグの中に戻して立ち上がった。


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