ただ今、政略結婚中!
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スーツケースの中に本を隠すと、バスルームに向かった。


エステで磨かれた肌は、嫌な汗をかいて台無しだった。


シャワーの下に立って、コックをひねると熱いお湯が勢いよく身体に当たる。


高級な香りを放つボディーソープをスポンジにつけて洗い始めた。


スポンジで洗う手の力は無意識に強くなり、肌に赤みを帯びていく。



このホテルは何もかも満足のいく設備がある。


ホテルの買収は、隼人さんにとってとても大切な仕事。


いつ終わるかわからないけれど、邪魔をしてはダメ。


シャワーに当たりながら、頭の中を整理しようと思った。


さっきから冷静になって考えようとしているのに、冷静になろうと思うほどパニックに陥りそうになる。


こんなんじゃ、隼人さんと顔を合わせられない。


それでもなんとかシャワーを浴び終えて、バスローブのままベッドに座った時、寝室のドアが開いた。


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