ただ今、政略結婚中!
キスして……抱きしめて……不安を取り除いて……。


けれど、私の口から出たのは……。


「ク、クルーズ……」


だった。


隼人さんは意地悪な笑みを浮かべて唇にキスを落とすことなく、胸の頂を含んだ。


「っ……ああっ……」


舌で捏ねるようになぶられ、身体がぐらつくとそのまま押し倒されるようにしてベッドに沈む。


片方の胸ばかり弄ばれて、痛いくらいに胸が張り詰めていく。


不意に胸への刺激が止んだ。


「その気になっただろう?クルーズから戻って来るまでお預けだ」


そう言って、口元に笑みを浮かべて、バスルームに行ってしまった。


お預けって……。


弄ばれた……。


あっけにとられた顔で、隼人さんが消えたドアを見つめていたけれど、その顔はすぐに弱々しい笑みになった。


少しの間、エステルを忘れていられたからだ。


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