ただ今、政略結婚中!
クローゼットを開けると、ホテルの白い薄紙に包まれたドレスを手にする。


クリーニング済みの薄紙を取り去ると、鮮やかなコバルトブルーのドレスが目に飛び込んできた。


隼人さんがシャワーから上がって来る前に、着終わっていたかった。


また胸を触れられたら困る。


ブラジャーなしのこのドレス、胸にパットは入っているけれどごく薄いもので、また刺激されたらしばらくしないとドレスが着られなくなってしまう。


急いでパンティを身につけ、ドレスの脇のジッパーを開けてそこから足を通す。


鏡で姿を確かめ、自分の顔に目を向ける。


不安そうな顔。


隼人さんに何があったか、見抜かれてしまいそうだ。


問い詰められたら、話してしまいそう……。


ダメ、まだ話せない……。


グッと下唇を噛んで、涙を堪えた。



< 341 / 566 >

この作品をシェア

pagetop