ただ今、政略結婚中!
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桟橋に立ち白い豪華クルーズ船を見て、感嘆のため息が漏れる。


堂々たるクルーズ船。


大型の堂々とした感じではなく、小型の船は細部までも凝っていて、所々の金色が夕日にあたり眩しいくらい。


「早く出航しないと、夕日が沈んでしまうよ」


船を見つめている私の手を隼人さんは握り、乗船を手伝ってくれた。


乗り込むと、らせん階段を上がり甲板を目指す。


前方の甲板に出た所で、船はゆっくりと動き出した。


磨かれた手すりまで来ると、隼人さんは私の腰を抱き寄せた。


沈む夕日に向かっていく船。


こんなにきれいな夕日を見たのは生まれて初めてだ。


私は隣にいる隼人さんを意識しながらも、海に溶けていく真っ赤な太陽をうっとりと見つめていた。


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