ただ今、政略結婚中!
「エステで疲れたのか?」


「えっ?ど、どうして?」


急に聞かれて、慌ててしまいそれを隠すようにワイングラスに手を伸ばした。


ワイングラスを掴もうとする指が空を切る。


私がグラスを持つ前に、隼人さんがグラスを取り上げたから。


「水かジュースにした方がいい。体調が悪そうだ」


エステルのことが気になって、つい考え込んでしまうのを止められなかった。


ぼんやりしたり、黙り込んでしまうのを隼人さんは誤解してくれたみたい。


「少し……船に酔っちゃったみたい」


探られるのを避ける為にそう言っていた。


「吐き気は?」


隼人さんは真剣な表情になって、聞いてくれる。


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