ただ今、政略結婚中!
「ほんの少しだけ……吐きそうなほどじゃないから大丈夫。それと、雰囲気に酔っちゃったのかも……」


「今までこんなことをしてくれる男はいなかった?」


「う……わかっているくせに……」


「デートぐらいはしただろう?」


「デ、デートぐらいあります」


「好きな男と?」


深く聞いてくる隼人さんに、私は戸惑う。


「この年になるまで、好きになった人ぐらいいます」


「だけど、バージンをあげるほどじゃなかった?」


「ぅ……どうしてそんなこと聞くんですかっ、からかわないで、もうやめて」


自分の恋愛話をするのは、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。


隼人さんは端正な顔を崩して笑う。


「すまない。からかってみたくなったんだ。昔の男のことなど興味はない。今、亜希が俺の側にいるだけでいい」


甘い言葉にますます顔から火が出そうで、水の入ったグラスを手にした。


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