ただ今、政略結婚中！
「……だから、何かあったらすぐに言って欲しい」


隼人さんの言葉にドキッと心臓が跳ねて、水を飲む手が止まる。


「……何かあったら……って？」


まさか知っている？そんなことないよね？


「あぁ、知り合いもいない外国で心細いだろう？何でも話して欲しい」


知っていたら、回りくどい言い方はしないはずだからエステルのことは知られていない。


隼人さんの表情は真剣そのもので、本のことを話してしまいそうになるのを必死で抑えた。


出てしまいそうになる言葉を飲み込んで口を開く。


「ふふっ、ニューヨークに来た時にほったらかしにした人の言葉だと思えない」


この雰囲気を壊したくて、茶化してみた。


「英語を話せると思っていたんだ。お嬢様育ちだから海外旅行も慣れたものだろうと。すまなかった」


隼人さんが謝った時、足音が聞こえて給仕係が現れた。


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