ただ今、政略結婚中!
両手には美味しそうなケーキとアイスクリームが芸術的に配置されたお皿を持っている。


先ほどの会話で緊張して、本当に胃が暴れ始めたみたいだった。


アイスクリームは喉を通って行くけれど、ケーキと添えられたクッキーは食べられなかった。



******



再び、私達は前方の甲板に出ていた。いつの間にか、船は動いていた。


「船酔いには遠くを見るといいらしい」


陸地に向かっている船から、カンクンのホテルの灯りが見える。


隼人さんの言うとおりに、静かに街の灯りを見つめていた。


穏やかな海とは異なり、不安がいっぱいの私の心の中は、嵐の中に大きく揺れる小舟のようだった。


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