ただ今、政略結婚中!
「でも、彼に話せないから、あなたは楽しいフリをしたはずだわ」


「……」


「子ネコちゃんはご機嫌斜めなのね?昨日は彼に抱かれたんでしょう?彼のセックスは最高よね?」


その言葉にカッとして受話器を乱暴に置いた。


すぐに電話が鳴り始める。


しばらく取らないで置いたけれど、電話が鳴りやまない。


仕方なくもう一度受話器を取って耳にあてた。


「勝手に切るなんて許さないわよ?いいこと?10分後に1208号室へ来て」


それだけ言うと今度はエステルが一方的に電話を切った。


私は受話器を持ちながら、茫然となった。


1208号室って……隣の部屋……?


自分たちが1207号室。


まさか、エステルが隣の部屋にいたなんて思いもよらなかった。


10分後に来いなんて勝手なことを言われて、行きたくないけれど、行かないわけにはいかない。


< 358 / 566 >

この作品をシェア

pagetop