ただ今、政略結婚中!
クリーム色の天井を見つめる瞳は揺れ始め、目尻を涙が濡らす。


止めようとすればするほど、涙は止まらなくてとうとう声を出して泣いてしまった。


「ううぅ……っ……」


枕に顔を埋めて声を押し殺す。


身を引き裂かれるような痛みをどうすることも出来ない。


この本を阻止するにはひとつしかないのだから……。


どのくらい経ったのだろう、電話の鳴る音に驚いて肩が跳ねた。


まさかエステル……?


ううん、パリに行くって言っていたし……隼人さんかもしれない。


涙を拭いて恐る恐る受話器を取った。


「ハロー?」


『起こしたか?』


私の心をドキドキ高鳴らせる声がした。


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