ただ今、政略結婚中!
ニューヨークに来た時のことが思い出される。


麗香に言われて、愛人がいるか確かめにきたんだったっけ。


あの時は愛人がいたら別れようと思っていた。


本当にそうなちゃったな……。


誤算だったのは、隼人さんを深く愛してしまったこと。


隼人さんの視線を背中に感じながらも、ドアの向こうへ行く時、私は振り向かなかった。


泣いていたせいだ。


最後に一目見たかったかけれど、泣いているところを見られるわけにはいかなかった。


後ろで大きなドアが閉まる機械音が聞こえた。


涙……肩が揺れ頬を濡らし、水滴がぽたぽたと床に落ちていく。


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