ただ今、政略結婚中!
胸に手をあてて顔を上げると、サングラスをゆっくり外すジョンがいた。


「どう……して……?」


バッグを持つ手が小刻みに震える。


「ちゃんと別れるか様子を伺っていたんですよ」


「そんなにまでして、エステルの言いなりなんですか!?」


彼は彼女の為なら、どこまでやるのだろう。


悲しみに暮れていた心が、激しく怒りに湧き立つ。


「まあ……それもありますが、ちょうど本社に用事があったんですよ」


「隼人さんは知っているんですか?」


「そんなわけないでしょう?彼は僕を警戒していたから。昨晩、隼人さんが貴方のチケットを取ったのを知り、急遽一緒の便にしたんですよ。機内では具合が悪そうでしたが、大丈夫ですか?ずっと眠っていましたね。起こそうかと思いましたよ」


機内でずっと見られていたと知り、吐き気に襲われる。


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