ただ今、政略結婚中!
舌鼓をうつほど美味しいお料理に満足して、デザートのケーキとアイスの盛り合わせを楽しんでいた。


ふたりで一本開けてしまったワインが効き身体が火照り気だるくなったから、ケーキとアイスとホットコーヒーで酔いを醒まそう。


「亜希、意地を張らないで彼にメールしてみたら?」


私は首を横に振る。


「なんて書いていいのかわからないよ」


「会いたいだけでいいんじゃない?」


「べ、別に会いたくないの。これから仕事を見つけて頑張るんだから」


「天下の紫藤不動産の若奥様が仕事ぉ!?」


「だって時間が有り余っているんだもん。何もしないでいるのは性に合わないし」


住んで2週間しか経っていないけれど、あの家が自分の家だと思うのは一生なさそうだと思う。


それはちゃんとした結婚生活を送っていないせいかもしれないけれど。


そこでまた彼の言葉を思い出してしまう。


隼人さんはあの家が気に入らなかったみたい。


『落ち着かない。俺が好きなのは黒かグレー、寒色系を好む』


ふんだ!そんな色じゃまるっきり暗過ぎるじゃないっ。


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