ただ今、政略結婚中!
『会議が長引いていたんだ。住所は知っているよな?タクシーで来てくれないか、管理人に開けるように伝えておく』


電話の向こうではガヤガヤとにぎやか。


「……迎えに来てくれないんですか?」


『ここからどのくらいかかると思っているんだ?待ちくたびれるぞ?』


それでもかまわないと言おうとした時、電話は切られた。


「もうっ!なんなのよっ!」


信じらんないっ!


そこまで無神経で酷くて冷たい人だとは思わなかった。


飛行機で疲れるのに、ハイヒールを履いてお気に入りの皺にならない素材のワンピースでおしゃれして、到着前にはお化粧まで直した私がバカだった。


腹立たしくて、右手にはめたピンクダイヤの指輪を抜き取ると、バッグの中へ入れる。


迎えに来ないのならば自力で行くしかない。


でも、どうしよう……。


あ!そうだった!


おととい、麗香が電子辞書をプレゼントしてくれたんだった。


「これがあれば英語が苦手でも、日本語を入れるだけで翻訳して英語で言ってくれるわよ」


あまり使わないかなと思っていたけれど、さっそく役に立ってもらおう。


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