ただ今、政略結婚中!
電子辞書を片手に、重いスーツケースを引きずるようにして歩き始めた。


あった!あそこがタクシー乗り場だ。


少し行くと、イエローキャブがずらっと客待ちしている。


近づくと大柄な運転手が降りてきて、スーツケースをトランクに入れてくれる。


あまりにも大きな男性で不安になりながらも後部座席に乗り込んだ。


そして隼人さんのアパートメントの住所をメモった紙と電子辞書を運転手に見せた。


運転手は『OK~』と愛想良く言って車を発進させた。


車が動き出すと、シートに身体を預けた。


うん、これがあれば何とかなるかも。


電子辞書をバッグにしまい、ホッと安堵した。


近場の海外は何度か行っているけれど、ニューヨークは初めての場所。


景色をゆっくり見たいところだけれど、着いたらどう対応したら良いのか考えていた。


隼人さん、完全に私が来ることを忘れていたみたいだったな。


彼は私が来ることを望んでいない。


そう思うと悲しかった。



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