ただ今、政略結婚中!
「そんなに忙しいのですか?」


「ええ。かなり忙しいですよ。紫藤不動産はアメリカでも注目されている企業ですから。隼人さんはなんでも自分の目で確かめなければ済まない性格ですしね」


ジョンの腕がベンチの背もたれにかかる。


私の肩にジョンの腕が触れてドキッとなる。


こっちでは普通のことなんだろうけど、男性と数えるほどしかデートをしたことがない私は肩に触れる手が気になった。


何気なくウェッジサンダルの留め具を確認する振りをして背もたれから身体を離す。


「亜希さん、可哀想ですね」


「えっ?私が可哀想……ですか?」


思いがけない言葉にジョンを見つめる。


髪は明るいブラウン、瞳はグリーンのように見えるけれど、グレーにも見える不思議な色。


「どうしてそんな風に思うんですか?」


もしかして、ジョンは私達のこと知っているの?


「ここはニューヨークですよ?見たいところはたくさんあるでしょう?出かけたいのではないですか?」


あ、そう言うことでしたか。


私達のこととは関係ないとわかって、ホッと肩を撫で下ろす。


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