きみとぼくの、失われた時間
だけどそれも、30分以内ですぐに打ち砕かれてしまう。
遠藤とテレビを見ていた筈なのに、いつの間にかテーブルに伏してうたた寝を始める俺。
「お子様には無理なんだって」
寝室で寝て来いよ、親友に揶揄されて、瞼を持ち上げる。
唸り声を上げながら、俺は絶対此処にいると笑ってみせた。
折角仲直りしたんだ、何かと一緒にいたい気分になるのって自然なことだろ?
相手にそう伝えれば、「恥ずかしい奴」悪態を付かれた。
んで勝手にしろ、風邪ひいても知らないぞと一蹴された。
照れ隠しなのは分かってる。
「大丈夫だって。俺、幽霊のようなもんだし、風邪なんかひかないよ。多分だけど」
「こんなにも健康そうな幽霊、見たことも聞いたことねぇよ。……坂本、なんかあったら言えよ。頼むからさ、消えそうになったら俺等に言えよ。突然消えられるの、もう嫌なんだ」
「ん。約束な」俺は目尻を下げて頷いた。
「絶対だからな」約束破ったらひでぇぞ、脅してくる遠藤に、どんなことをするんだって聞けば、
「お清めの塩と御札を用意する」
「完璧に幽霊扱いじゃねえかよ。坂本健を成仏させる気か、遠藤」
冗談もほどほどに、うつらうつらと夢路を歩く中、俺は遠藤と夜が明けるのを待った。
いつか夜は明ける、どっかの流行曲で歌われそうなフレーズに今なら共感を持てる。
そう、いつかは夜が明ける。
15年間、俺のことを探し、待ち続けてくれた親友と俺の間に、今が夜が明けた。
俺は今日という日を、遠藤という親友の思いを、決して忘れやしない。
⇒4章