きみとぼくの、失われた時間
<01>遊びたい年頃
* * *
「秋本先生。学習ってお言葉、ご存知ですか? 毎度痛い目に遭ってる筈なのに…、いい加減学習して下さい」
朝、俺は亀布団になっている教師に声を掛ける。
「あんまり大きな声出さないでよ」
布団の中でうんうん唸っている秋本から苦情を飛ばされたけど、俺は普通のボリュームで喋ってるっつーの。
憮然と溜息をつく俺は傍らに置いているお盆に目を向けて、二日酔いの薬は飲めそうかと質問。
うっぷ、返事の代わりに聞こえてきた呻きに俺はすかさず洗面器を準備。
吐くなら布団の上じゃなく、此処にお頼み申したい。
片付けが大変になるから。
プライドが勝ったのか、彼女は土色の表情ながらも見事に嘔吐を堪え、
「飲み過ぎたぁ」
寝返りを打ってぐったりと枕に沈む。
普段から酒を飲んでは二日酔いを起こす常習犯は、昨晩いつになく酒を煽ってきたらしい。
なんで“らしい”と言っているか、それは俺がその現場を見ていないからだ。
彼女は昨晩、女子会(女子だけで集まる会なのか?)ってのに行って、日頃のストレスを発散する如く存分に酒を飲んできたらしい。
酒がまったく飲めない友達にマンション下まで車で送ってもらって帰宅したんだけど、秋本の奴、超べろんべろんだったよ。
絡みが鬱陶しいのなんのって、もはや凄まじいの一言に限るね。帰って来て早々スヤスヤと眠る良い子を叩き起こしやがったんだから(秋本の帰宅した刻は午前2時半)。
ハメを外した、彼女は苦虫を噛み潰したような顔を作る。
だけど楽しかったんだからしょうがない、と聞いてもいないのに、つらつらと俺に弁解する秋本。
その女子会の集まりは大学時代の同輩らしく、久々にはっちゃけたとか。飲みついでにカラオケオールに誘われたけど、それはちゃんと断った。えらいでしょ。
なーんて俺に伝えてくる。