きみとぼくの、失われた時間
「大体坂本」あんた私が恋愛していいわけ、意味深に聞かれて、俺は微苦笑を零した。
したらしたでしょうがないと割り切るしかない、せいぜい邪魔にならないよう遠藤の家にでも居候させてもらうさ。
あいつが恋愛しちまったら、これからどうするか考えることにしよう。
「俺はこの時代の人間じゃないからな。あんま、この時代に生きる人間の生活に支障をきたしたくはないんだよ。
幾らお前と同級生とはいえ俺、15のまま2011年を彷徨っている人間だしな」
「……、やっぱり恋愛なんてしない。あんたがいるから恋愛しない」
秋本はこれ以上聞きたくないとばかりに、ガバッと布団を被ってしまう。
だから俺がいるからどうとか、そんなことを考えて欲しくないんだけど。
鼻の頭を掻いて彼女の名前を紡ぐ。
すると某教師、「恋愛しなかったら」あんたずっと此処にいるんでしょ、とクエッションしてきた。
まさかそんな質問が飛んでくるとは思わず、「え?」間の抜けた声を出してしまう。
「いるんでしょ?」再度質問されて、俺はどう答えて良いか分からず、「そりゃ…」他に行くところないしな…、と生返事。
「じゃあ恋愛しない」
きっぱり告げてくる秋本先生だけど、ちょ、お前意味分かんねぇよ。俺、馬鹿だから期待しちまうぞコラ。
とか冗談を思ってる場合じゃなく、秋本、今のなんだよ。