きみとぼくの、失われた時間
今日一日、秋本は寝込むだろうと踏んだ俺は彼女のために粥を作る…、ことはできないから、レトルトの粥をコンビニで買って来ることにした。
トイレに引き篭もったままの秋本にそれを伝えて(彼女から返事はなかった。代わりにノックで承諾を頂く)、キャップ帽と財布を片手に外の世界へ。
行きにちょい寄り道をして、行きつけの公園に赴く。
休日だからか、昼前の公園はまばらながらも人がチラホラ見受けられた。
砂場で遊んでいる親子、ブランコで駄弁っている小5くらいの女子三人組み、グランドでは俺くらいの年頃の男子達がサッカーをしている。
体いっぱい動かしてグランドを駆け巡っている姿に俺は羨ましさを感じた。
いいなぁ、俺もサッカーしたいな。
外で安易に遊ぶことも出来ない俺からしてみれば、グランドを駆けている男子達は自由そのものを象徴しているような気がする。
はぁああ…、さすがに遠藤や秋本に「サッカーしようぜ!」とかは言えねぇし。
だってあいつ等、平日は汗水垂らしている社会人のアラサーだぜ?
休日はゆっくり寝ていたいだろうし…、体もついていかねぇだろうし(これを言ったらぶっ飛ばされそうだけど)。
やきもきしながら公園の一風景を見つめていた俺は、少しだけ鬱憤を晴らそうと空いたブランコにつま先を向ける。
けどすぐに足が止まった。
すぐ傍の滑り台に凭れ、つくねんと決まり悪く立っている少年を見つけたからだ。俺
と同じように羨望を抱いてサッカー光景を見つめているけど…、なんとなく気になった俺は自然と相手に歩んだ。
性格上、普段は絶対に自ずから声を掛けないだろうに、「なあ」こうして気さくに声を掛けてしまうのは俺自身同年代に飢えていたのかもしれない。
突然声を駆けられた少年はびっくりした顔で俺を見つめてくる。
何か用かとばかりに視線が訴えてくるもんだから、「サッカーして来ないの?」率直に意見を申した。
醸し出す雰囲気で向こうのグランドにいる男子達が少年と知人だってのは分かる。