きみとぼくの、失われた時間
<02>2011年の同級生
「―――…ふうん、1996年から15年後の世界、2011年にねぇ。嘘っぺぇ話だな。信じられねぇや」
島津 徹也(しまづ てつや)。
2011年時点で15歳の中学生、謂わば15年後にタイムスリップしてきた俺と同級生らしい。
買ったサイダーを飲みながらジロジロと俺を観察してくる。
一方の俺は頭を抱えていた。
なんでこうなっちまうかなぁ、人恋しさで招いた自業自得とはいえ、これは非常に不味い事態。
だって俺は15年前に失踪して以下省略。
顔は近所にばれちゃ以下省略。
こんな話も暴露しちゃいけない以下省略。
でも相手を誤魔化しきれそうになかったから話すしかなかったんだよ。
俺は弁がたつ方じゃないんだよ。
おつむもちっちゃいんだよ。
嗚呼、秋本達にばれたらお小言だ。これは確実。
やっちまったと溜息をつく俺に、「ドンマイだな」島津が鼻で笑ってくる。
何だよお前、最初こそ俺のことを疎ましいって思ってたくせに、今頃コミュニティー能力を発揮してくるんじゃねえよこんにゃろう。
軽く相手を睨むけど、これも自業自得、嫌味も甘受するしかない。
膝に肘を置いて頬杖をつく俺は、満目一杯の景色を眺めて現実逃避。
神社の石段から見える景色は15年前とまったく変わっていない。石段の下の道路も、真っ赤なポストも、電柱もあの頃のままだ。
その景色が俺を慰めてくれるような気がする。