きみとぼくの、失われた時間
「俺、公園のグランドで、よく友達とサッカーしてたんだ。15年も前の話になるけどさ」
今はやる友達もいないし、友達は皆、アラサー。
俺と二倍も歳が離れちまって…、ちょいサッカーしてる奴等を見ていて羨ましく思ったんだ。
だから同じようにサッカーを見てる島津に声を掛けて言っちまったわけ。
『やりたかったらやってきたら?』って。
おかげで俺は島津に不審者な眼を飛ばされちまったわけだけど。
ちょい毒を含んで相手に伝えると、「うるせぇな」誰だって怪しいと思うぞっと脹れ面を作る。
多分ワケありでサッカーの輪に入れなかったんだろうから、それ以上は何も言わない。
不貞腐れている2011年の同級生に微笑する。
横目でこっちを見てくる島津は、ちょい決まり悪そうに頬を掻いた。
「なんか寂しいな。同級生がでっかくなってるって」
「……、そうだな。寂しい、かも。
知り合いが二倍も年を取っているって現実は本当に寂しい。驚きや衝撃はあるけど、時間が経てば寂しいかもな。友達と時間を過ごせなかったことが何よりも寂しいかも」
過ごせなかった分、俺という存在は忘れられてるんじゃないだろうか。
いやきっと忘れられている。俺が第三者なら、さほど繋がりを持っていない相手の事なんてすぐに忘れてしまう。
そう思うと今日(こんにち)まで俺を探し続けてくれていた人達がいるだけ、俺は幸せ者なのかもしれない。
同調してくれる初対面の島津にこうもペラペラ身の上を語れるのは、俺自身、同級生が恋しかったのかも。
俺の同級生達は心身成長し切っている。
秋本も遠藤も何処となく大人でお兄さんお姉さんオーラが醸し出されているんだ。同級生って感じじゃない。
頼り甲斐がある反面、物寂しい気もする。
今だって遠藤とは親友だし、秋本とはクラスメートに違いないんだけど、さ。