きみとぼくの、失われた時間
「宜しく」目尻を下げてくる永戸は、俺達にサッカーをしていたのかと質問。
頷く島津に永戸はまだ喧嘩しているんだと決まり悪そうに微苦笑を零した。
仲直りしていいんだよ、永戸はおずおずと島津に物申す。
僕のせいで久野達と喧嘩したままなんてばつが悪いし、永戸の言葉に島津は不機嫌に鼻を鳴らした。
「俺もお前も悪くねぇ」
謝るのは向こうだとぶすくれている。
彼等の会話で話が見えてきた。
曰く、数日前にした体育の授業で島津達は久野って同級生達と対峙しているらしい。
よく話を聞けば、見るからに運動音痴そうな永戸が足を引っ張ったせいで、バスケの時間、揉め事に発展したとか。
執拗に永戸が責められていた光景に堪えられなくなった島津は、持ち前の正義感を爆ぜさせ、誰にだって得意不得意はあると反論。
幼馴染みの肩を持ったために、スポーツマンの久野との仲に亀裂が入ったそうな。
お互いにスポーツ大好きの久野と島津は普段、とても仲が良いみたいだけど、喧嘩したことによって島津は久野やその仲間と遊ばなくなったらしい。
なるほどな、だから島津は公園で遊んでいた男子達の輪に入らなかったのか。
ここからは俺の憶測だけど、島津の奴、内心では仲直りしたいんじゃないかな。内心では。
でも、永戸のことがあるから引くに引けなくなったってカンジ。
じゃないと公園の滑り台から、飽きもせずサッカーなんて眺めるかよ。
負い目を感じているのは永戸で、「悪いのは僕だし」と項垂れている。
構わず仲直りして欲しいってのが永戸の願いみたいだ。
「馬鹿」お前は悪くねぇって、島津は永戸を励ました。
そして気にするなとも言った。
運動音痴だってのは誰もが知ってるし、その分、勉強で助けてもらってる。久野だってお前にいつも助けられてるのに、それを忘れて責め立てた。
だから許せなかったんだと島津は苦笑い。
何より幼馴染みが執拗に悪に仕立て上げられている事が見ていられなかったのだと、島津。
思った以上に正義感の強い男らしい。