きみとぼくの、失われた時間
……あいつが恋愛できないの、やっぱ俺がいるからか。
不機嫌になりつつ俺は掻いた胡坐の上で頬杖、小さく吐息をつく。
遠藤のところに行った方がいいのかな、俺。
居候がいると何かと不便・不自由だろうし、気だって遣わせるし。
大体無理があったんだよな、片恋の家に居候だなんて。
だけど遠藤のところに行くって切り出して、あいつはOKを出すんだろうか。
外出する前のやり取りを思い出し、俺は大袈裟に溜息。
俺、あいつの心が分からないや。
大袈裟に溜息をついたせいで、二人に声を掛けられた。
なんでもないと肩を竦めて空笑い。
この悩みだけは幽霊以上に打ち明けられなさそうだ。幽霊が打ち明けられても、これだけは絶対に。
そう思った刹那、
「坂本―!」
空気を裂くようなドデカイ怒声が神社に響いた。
電流が走ったかのごとくビリビリと空気が怒気で入り乱れる。
聞き覚えのある男の声に、おずおずと視線を上げた。
そこにはゼェハァッと息をついて石段を上り切っている遠藤の姿が。
おやまあ、今日は私服姿ですか親友よ。
ですよね、世間は日曜、お休みですよね。
それに…うっわっ、最悪っ。
俺は悲鳴を上げそうになりながら、急いでご神木の陰に後ろに隠れた。
遠藤の後ろにいるのは般若のような形相をした秋本ご本人。
二日酔いで死にかけていた筈なのに、なんでこんなところに。
嗚呼、俺がさっさと帰らなかったからだよな。二人とも怒ってる、超怒ってる。空気だけでも分かる。
ドッと冷汗を流す俺は変に心臓が高鳴った。
恐る恐る木の陰から向こうを見やれば、「坂本っ」「三秒以内に此処に来なさい」二人からお呼び出しを食らってしまう。