きみとぼくの、失われた時間


再度、此処にいる理由を尋ねる。

 
永戸はどうしてだろうね、生返事を返して吐息。

朝の九時からずーっと此処にいるのだと苦虫を噛み潰したような顔を作った。

おかげで暇でしょうがない。
時間を潰せるウォークマンは家だし、携帯をする気分でもないし、と俺に愚痴を零してくる。


ワケありなんだって察した俺は深く相手の心に踏み入ろうとはしなかった。

なにせ俺は二度目ましての人、心の内なんて絶対明かさないだろう。


「好い天気だね」


背面に持たれて空を仰ぐ永戸は、平和過ぎて眠くなると欠伸を噛み締めた。感染った俺も一つ欠伸。

今日も好い天気だ、穏やかな気候が眠気を誘う。
 

会話なくベンチに座り込んで暫し時間を肌で感じていると、「そうだ」今から暇、永戸が不意に静寂を切り裂いた。

暇ならファーストフードに行かない、ニコッと笑みを浮かべて俺にお誘いを申し出てくる。


「お金は持って来てるんだ。坂本、暇なら一緒に昼飯食べない? どうせ学校には行かないんでしょ」
 

暇潰しを見つけた永戸はそうだ、そうしようとベンチから下りる。

ファーストフードか、久しく行ってないな。

此処暫く、昼食はレトルトばっかだったし、外食って外食もできていないし。

外食行為は危険かもしれないけど、日々の日常にそろそろ刺激が欲しくなっていた俺はちょっと間を置いて行くとベンチから飛び下りた。


まーた秋本や遠藤に怒られちまいそうだけど、これからのことで鬱々と家に引き篭もるのも退屈なんだよな。
気も落ち込んでいくだけだし、少しくらいはいいだろう。
 
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