きみとぼくの、失われた時間
決まりだと指を鳴らす永戸は、早速近場のファーストフード店に向かい始める。
俺は彼と足並みを揃えた。
大通りに出て、穏やかな昼下がりの街並みを共に歩く。
今日も青空、好い天気そのものだ。
気分は良いけれど、俺自身のために努めて日陰を歩く。
高層ビルやマンションの陰を好む俺に、「日光が駄目なの?」永戸が不思議そうな面持ちを作った。
そういえば坂本は病弱体質だったね、と思い出したように俺の嘘を口にしてくれたもんだから弁解する手間が省けた。
二階建のファーストフード店に入ると、適当に安値のハンバーガーセットを頼んで席を陣取る。
一階よりも二階の方が人が少ないということで、俺達は二階へ。
人がぽつんぽつんといる二階のボックス席に腰を下ろして、早速昼食会を開始する。
「美味そう」俺はハンバーガーの包装紙を剥いて、ちょいテンションを上げていた。
だってずっとコンビニ弁当やレトルト、カップ麺ばっかだったから、こういったジャンクフードを口にする機会がなかったんだよ。
塩気のきいたポテトを口に放って、ハンバーガーに齧り付く。
ズズッとコーラで喉を潤し、またハンバーガーに齧り付く一連の動作に永戸は笑声を漏らした。
良い食べっぷりだね、お褒めの言葉を頂戴したから、俺は頬を崩す。だって美味いんだもん。しゃーないしゃーない。
「帽子は取ったら?」
永戸に指摘されて、俺は忘れていたとキャップ帽に手を掛ける。
けど、ちょっと思案。大丈夫かな、キャップ帽を取って。
一応、俺、失踪少年…、まあ大丈夫だろう。
人も疎らだし、そうそう俺の知り合いに会うってこともないだろう。
2011年の世界に来て随分日が経ったけど、知り合いに再会したのは二人だけだしな。
十二分に周囲を確認してキャップ帽を取る。ぺったんこになっている髪を整えて、ポテトに手を伸ばした。