きみとぼくの、失われた時間
「あいつも教師らしいこと言ってるんだな。姉ちゃんらしくねぇや」
俺は相手に気持ちを悟られないよう、従姉妹らしい発言をした。
「表面がいいんだな」フンッと鼻を鳴らして皮肉れば、
「チクってやろう」永戸が茶化してくる。
やめろって、そんなことされた日には俺、あいつに痛い拳骨を何発食らうから。
一頻りおどけ合い、俺は完食したハンバーガーの包装紙を丸める。
ぎゅっぎゅっと丸めてトレイの隅に放置。小さくなっていた包装紙が徐々に膨張していく。
横目で眺めながら、冷えかけたポテトを食べるために容器を引っくり返していると、何処からともなく音が聞こえてきた。
その正体はバイブ音。
永戸の携帯が声を上げていたようだ。
ササッと永戸は携帯を開いて、中身を確認している。
うへー、秋本が言うように今時の子供は中坊でも携帯を持てる時代なんだなぁ。
俺の父さんなんて、まだPHSだぞ。
15年の月日ってのはすげぇな。
情報技術は日進月歩の時代を迎えているってテレビが言ってたくらいだから、ホント目まぐるしく変化している世の中なんだな。
ポケベルが廃れてちまってるなんて嘘みたいだ。
永戸は微苦笑を零していた。メールだったらしいんだけど、メールの相手が幼馴染みだったらしい。
お前等、学校に携帯なんて持って来ていいのか?
俺の時はポケベル持ち込み禁止だったぞ。まあ、俺は持って来ていたけどさ。
どうやら永戸は島津に学校に自分が来ていない理由をメールで訊ねられたらしい。
まさか体育が嫌でサボったんじゃないか、と詰問するような文面を俺に見せてくれる。
ははっ、多分あいつ怒ってるぞ。
「体育が嫌ってのもあったんだけどね」
意味深に溜息をつく永戸は、メールを返信しないまま携帯を閉じてしまう。