きみとぼくの、失われた時間
拍数を置いて、どうしたんだと俺は相手の心に少しだけ触れてみた。
なんとなく陰りを作る永戸が気になったんだ。
生返事をして唸る永戸は、「人間は」どうして空を飛べないんだろうね、とぶっ飛んだことをのたまう。
なんでってそりゃあ、人間には翼がないからさ。
妥当なお返事を返すものの、永戸は上の空で店内を見渡した。
酷く疲れ切った顔を作っている。俺と同い年…、まあ今は同い年のくせに、なんて顔をしてるんだよ。
瞬きをして相手を見つめていると、「僕は受験生なのに」なんでサボッてるんだろう、出席日数は大事なのに、と永戸は自問自答を始めた。俺なんてそっちのけだ。
毎日学校に塾、それの繰り返し。機械的に動く毎日が窮屈だと永戸が吐露する。
連鎖するように学校ではヘマするし、友達同士の仲に亀裂は入れちゃうし、どうして僕ってこうなんだろう。
幼馴染みには気を揉ませてばっかりだし。
いたらいるだけ迷惑掛けるし。
永戸の自問自答が自己嫌悪に変わった。
パチクリと目を瞠って吐露を聞いていた俺は、最後のポテトを口に入れてそれを噛み締める。
で、軽く笑った。
途端に相手が不機嫌になんだよっと睨んでくる。
「ごめんごめん」俺は片手を出して詫びを口にした。
「俺と同じだと思ってさ。つまり要約するとさ、居場所がなくて窮屈だって思ってるわけだろ」
ズバリ指摘してやると、永戸は唸った。ビンゴだなこりゃ。
「だったら俺と同じだ。あんまりにも世界が窮屈でこの中で生きる自分、超可哀想とか思うんだよな。まさしく俺と同じだ。俺も永戸とおんなじことを思ってたよ」
俺もお前も我が儘な悲観者だとおどけた。
今度は向こうが目をパチクリさせている。
構わず俺は、「ナニをしても駄目な時は」自分なんて消えちまえばいいとか思ったりするんだよな、相手の気持ちに便乗。