きみとぼくの、失われた時間
一から十まで説明しやがれと唸る島津に狼狽する永戸は、視線で俺に助けを求めてきた。
噴き出す俺は今の状況を素直に教えてやればいいんじゃないかと助言。
素直に従う永戸は、「夕陽を見てる」と状況を説明した。
そんなこと聞いてねぇよ、盛大なツッコミを頂いているもんだから俺は必死に笑いを押し殺す。
困り果てる永戸は、「実は旅に出てさ」もっと具体的なことを述べた。
頓狂な声を上げる島津、それは俺にも聞こえてくる。
余所で永戸は結論を見つけて、まるで自信をつけたように繰り返した。旅に出てる、出てるんだ、と。
「徹也。僕はね、今、旅に出てる。ちっぽけな旅にさ。
今日は学校にも行かない、塾にも行かない、家にも帰りたくないかも、僕は旅を満喫したいんだ」
ますます素っ頓狂な声を上げる島津、意気揚々としている永戸の隣を陣取っていた俺は堪え切れずに笑声を上げる。
見渡す限り街は夕焼け色に化粧されていた。