きみとぼくの、失われた時間
暫く歩道を歩いていると、とあるアパート前に差し掛かった。
築数十年は経っているであろうぼろっちいアパート前を通っていると、向こう側から「天音!」怒声が聞こえた。
揃って立ち止まり、振り返る。
そこには憤った面持ちを作る島津が仁王立ちしていた。
まさしく今、下校中の島津は俺等の姿に不機嫌面。
特に永戸の姿にドドド不機嫌面になって、今の今まで何処で何をしていたのかと詰問。
ズンズンと幼馴染みに歩み寄って、「何してたんだ。え?」指で何度も相手の心臓上辺りを攻撃している。
「え、っと。その」
おどろおどろと挙動不審になっている永戸は、愛想笑いで「旅に出ていました」と指遊び。
それはなんべんも聞いたっつーの!
地団太を踏む島津は相手の首を腕で締めて、なんでサボりやがったんだよっと捲くし立てている。
「サボりのテメェのために、ノートまで取っていた俺って超偉いだろ? なあ?」
「く、くるしっ!」
「クッダラネェことでサボったには違いねぇだろうが、健と一緒ってのが…っ、まさか遊びまわっていたんじゃねえだろうな? あーん?」
俺を除け者にして遊びまわっていたってなら、半殺し決定だ!
ググッと腕力を強めていく島津に永戸はギブアップだと申し出ていた。騒がしいやり取りだけど、俺には分かる。
あれが二人のスキンシップだって。
わりかし永戸も楽しそうだし。