きみとぼくの、失われた時間
<04>幽霊の一歩
今しばらくご神木と時を過ごした俺は、暮れた空から目を放して腰を上げる。
随分長く神社で時間を過ごしていたような気がするけれど、実際、そんなに時間は経っていない。
五分程度、そこに腰掛けていただけだ。
日が暮れてしまうだけで見える世界がまるで違うんだから、太陽の存在の大きさを痛感する。
「もう少しだけ、な」
俺はご神木にもう少しだけ時間をくれるよう頼む。
木肌を優しく撫でて、軽く抱き、その場を後にした。
冷たい石段を下って左折。秋本の部屋があるマンションに向かって足を動かす。外灯が点き始めた。
2011年の夜が到来したんだ。
俺は今日も2011年の夜空の下で生きている。
ふーっと息をついていた俺だけど、「あ。やべ」永戸と島津の存在を思い出して、あっちゃーっと鼻の頭を掻いた。
あいつ等を置いて此処まで来ちまったぜ。
どうしよう、あいつ等、俺がいきなり走り出したもんだから戸惑ったんじゃ…、あーあ、やっちまった。
戻って詫びの一つでもするべきだろうか。
だけどあいつ等、まだあのアパート前にいるかどうか、一応付近まで行ってみるか。
決意して十分後のこと、俺はあいつ等と無事再会することができた。イキナリ走り出した俺を探してくれていたみたい。曲がり角で鉢合わせになった。
「坂本」急に走らないでよね、永戸が開口一番に文句垂れてくる。
びっくりしたじゃないか、不機嫌になる永戸に悪い悪いと片手を出す。
隣で仁王立ちしているドドド不機嫌の島津はナニを偉そうに、と鼻を鳴らしていた。
どうやら俺と永戸の二人旅を耳にしたよう。
除け者にされたと不貞腐れている。
俺は力なく笑みを返した。大丈夫だって、島津。
今度はお前と永戸で旅すりゃいい。
学校をサボって、勉強よりも大事な事を探せばいいさ。
お前等は同じ時の時間を生きている。何度だって旅が出来る。