きみとぼくの、失われた時間
(15の坂本がこの世界にいる。まだ信じられないよな)
普通に考えて信じられないだろう。
失踪した相手が15のまま現れるのだから。
いっそ幽霊と称した方が納得する、が、キャツは自分達と同じように物を食べ、睡眠を取り、呼吸をして今日を生きている。
こんなにも人らしいのだから、培った知識と照らし合わせてみても彼は幽霊ではないだろう。幽霊では。
自分のところに泊まりに来た時なんて、もっぱら好きなアーティストのCDを聴き、ゲームをしてはしゃぎ、DVD鑑賞に胸を躍らせていた。
幽霊があんなにも娯楽を堪能するか?
やっぱり彼は普通の人間なのだ。
アラサー。バツイチ。
そう人を馬鹿にしてくる親友を見ていると、小生意気な弟でも持った気分になる。
肉体、精神年齢的に自分の方が成長しているからそう思ってしまうのだろう。
親友というよりは兄弟に近い心境。
けれど親友はやっぱり親友なのだ。
あーあ、それにしても親友は羨ましい。
仕事をしないで良い年頃なのだから。
自分もあの頃に戻りたい。
仲直りした今なら大好きだったサッカー、もう一度プレイできそうだ。
「ガキ時代の有り難味を痛感する」
吐息をついて携帯を掴む。
「ははっ、ガキに戻りたいのか?」
だったら飲めねぇぞ、寺嶋は飲む仕草で揶揄してくる。
綺麗にスルーして遠藤は携帯を開く。
着信履歴から番号を呼び出そうとしたのだが、また新着着信が入っていることに気付き、そちらを優先。
留守電にメッセージが残っていたため、それを聞くことにする。