きみとぼくの、失われた時間

一方、駆け込むように男子便所に入った遠藤は個室にはいるや否や電話を掛け直す。　
　

コールを聞きながら遠藤は出てくれ、出てくれよ、祈願する他に術がない。


留守電のメッセージを思い出して、ふざけんなよっと個室の壁を拳で叩く。


唾を吐き掛けてやりたい気持ちが込みあがってくる。


親友にではなく、この事態を引き起こした神様、もしくは世界とやらに。　



「火急も火急じゃねえかっ、ばかやろう。早過ぎんだよ。急過ぎるんだよ……、坂本」　



通信機器からは虚しくむなしく、いつまでもコールだけが響き渡った。