きみとぼくの、失われた時間
あんたが見つからないまま卒業を迎えた放課後のこと。
ひとり教室に戻る遠藤を見つけて、私は後を追った。
なんとなく元気のない遠藤が気になったの。
でも教室に入った遠藤に声は掛けられなかった。
だってあいつ、泣いてたから。
一緒に卒業したかった。
一度でいい連絡をくれ。
ごめん、酷いことを言ってごめん。
遠藤の懺悔に廊下で佇んでた私自身も、涙が出てきた。
なんであんたが此処にいないのか、それにも腹立たしかったし、あの日あの時あの瞬間、面と向かって好きと言ってくれた坂本に私はどう対応していた?
素っ気無かったんじゃっ…、人の気持ちを突っぱねるようなことばかりしていたんじゃ。
こんなことになるなら、好きといわれた時、素直にありがとうって返せば良かった。
ありえないはあんまりじゃない。
それに何度も好きといわれて、嬉しくないわけなかった。
本当は気持ち、揺らいでいたし傾いていたし伝わってもいた。
あんなに真っ直ぐ告白してくれていたのに、なんで私は何も返さなかったんだろう。
あいつのこと―…だったのに。
教室で遠藤が懺悔している間、私はずっと廊下の片隅で泣きべそを掻いていた。後悔ばかりが胸を占めた。
卒業後して進学しても、その後悔の念は消えなかった。
高校から大学に進学する間、私は何人かの人と付き合った。社会人になり、教師になってもそれなりに恋愛はしてきた。
けどあんたのことを引き摺った。ずっとずっとずっと、引き摺っていた。
恋愛の最中は忘れる事が出来ても、一つの恋が終わるとあんたのことを思い出すの。
もしもあんたと再会したら、まだあんたは私のこと、好きって言うのかしら?
そんなことばっかり思っていた。未練たらたらで毎日を過ごしてきたの。あんたを思い出す度、胸がじんっと爛れたように疼いてた。