きみとぼくの、失われた時間
かろうじて七時過ぎなら親も許してくれるだろうけど、八時過ぎだったら何していたんだって詰問してくるに違いない。
言い訳を考えておかないと。
こういう時、部活をしておけば良かったなぁって思うんだよな。
部活だったら先輩に誘われて…とか、ミーティングがあって…とか、色々言い訳も思いつくんだけど。
ポケベルで一応連絡入れておくかなぁ。
…って、あれ?
俺は足を止めて鼻の頭を掻いた。
いつものように家路を歩いていた筈だよな…、俺。
もうそろそろ沼地が見える筈なのに、見えてきたのは馬鹿でかいマンション。
すっげぇデカくて綺麗なマンションが俺を見下している。
やけに目立つマンションだけど、近所にマンションなんてあったっけ?
最近建ったのかな?
何階建てだろ、このマンション。
んーっ、俺、道間違えたのかな。
だな、きっとそうだ。
未開の神社に足を踏み入れたから帰り道を間違えたんだ。
神社なんて滅多に足を踏み入れないし、住宅街外れまで来ることもそうはない。
道を間違えたんだ。
急いでる時に俺、ナニおっちょこちょいかましてるんだろ。
踵返して俺は来た道を戻って行く。
早足で道を辿っていた足はすぐに減速し一時停止。俺は腕を組んで首を傾げた。
やっぱり道、間違っちゃないぞ。
神社まで戻って来ちまったもん。
じゃあ俺の見知った沼地は何処に行っちまったんだろう?