きみとぼくの、失われた時間

<01>俺の家族紹介


 
* * *
  
 
俺の家庭、坂本家は極々平凡な四人家族。


某株式会社に勤めているリーマンの父さん、週3日の割合でパートに励む母さん、二つ年上の兄貴に俺。

どっこにでもいそうな普通の家庭でとびっきり裕福でもなければ、とびっきり貧乏でもない、そこそこの生活をしている家庭だった。
 

それなりに仲の良い家族だったとは思う。

よく会話も交わす家族だったし、幼少は兄貴と一緒に遊びにもよく連れて行ってもらっていた。


兄弟同士、仲もそれなりに良かった。


まあ、喧嘩もしょっちゅうだったし(いっつも俺が泣かされていたっけ)、兄の特権のせいでよくパシりにもされていたけれど、何だかんだで仲は良かった。
 


いつまでもこの関係が続くんだと思っていた、ある日のこと。


睦ましかった両親が手の平を返したように喧嘩をするようになった。

原因は不景気での経済圧迫、家計への打撃、子供の教育費問題。加えて父さんの減給。


冷え込む経済のせいで父さんの会社が社員の給料を減らしてしまったらしい。

しかも春のボーナスもその年から無し。


子供は成長に伴って教育費も掛かるもんだから、父さん、母さんは堪ったもんじゃない。
 

最初こそあれやらこれやら節約しようと話を進めていたんだけど、段々と節約に対する意見と物の価値観が食い違ってきて、ついには自分達の不満を爆発。


水掛け論で収拾のつかない喧嘩を勃発させてしまった。


すぐに収まるだろうと思っていた喧嘩も決着が付かず、その日を境に、二人の仲に亀裂が入ってしまった。


俺が中3に進級した頃だった。

< 215 / 288 >

この作品をシェア

pagetop