きみとぼくの、失われた時間
契機はちょっとしたことだったというのに…、両親は毎日のように喧嘩喧嘩けんか。
顔を合わせれば、何かしら嫌味を飛ばしたり、愚痴を飛ばしたり、自分達の我慢していたことを主張したり。
居心地が悪いってもんじゃない。いい加減にしてくれと何度思ったか。
だけど、安易に口を出せば逆ギレは目に見えていた。
実際、俺は何度も止めに入って逆ギレされてしまったのだから。
いつしか止め入る行為をやめちまった。
バカを見るのはこっちだから。
その頃からかな、一々両親が息子達の成績等々で嫌味を飛ばすようになってきたのは。
何かあれば鬱憤を晴らすように息子達のだらしなさを指摘して、延々と愚痴ってくる。
要領の良い兄貴は成績の基準をいつもクリアしていたし、家事もそれなりにこなせていた。
頼れる兄貴だったから、両親も安心して家を任せられる長男だと思っていたようだ。
対して俺は家事なんてメンドクセェ、勉強もイマイチな次男。恰好の餌食だった。
叱られる度に不貞腐れたし、反論もしたけど、結局最後は親に軍配が挙がる。
だって向こうは正論を述べているんだ。
そりゃあ、俺の分は悪い。
だけど俺は俺なりに両親の事を気遣っていたつもりなんだ。
家事はしないし、勉強も全然だけど、二人が喧嘩しないよういつも会話作りに励んでいた。つまらないことでも話題を挙げて、場の空気を和ませようと努めていた。
兄貴には伝わっていたみたいだけど、両親には伝わらず、能天気だと悪態つかれたことも多々。
兄貴はいつもそんな俺を小ばかにしていた。
勿論、それも空気を和ませようとする手法だって分かっていたから、俺も強くは反論しなかった。