きみとぼくの、失われた時間
それでも両親の仲に切れ込みは入る一方。
俺はある日、兄貴に聞いたんだ。
兄貴の部屋で、漫画を読みながら『もしも離婚になったらどうするんだろう』って。
肩を竦める兄貴は気にする素振りも見せなかった。思う点はないようだったけど、俺は不安で一杯だった。
兄貴と違って、俺はデキが宜しくない。
親が子供二人をいっぺんに引き取るとも思えないから、片方ずつ引き取るんだろうけど…、二人はきっと兄貴を取りたがる。
でも兄貴を半分にはできない。
片方は必ず俺を引き取ることになるわけだ。
落胆する親の顔を思い浮かべただけで、胃がキリキリと痛んだ。
『なあ兄貴…』
『あーうっせぇな。勉強に集中できねぇだろうが。お前、自分の部屋で読めって』
シッシと手で出て行けと合図してくる兄貴に構わず、『父さんと母さんはさ』子供を産んだことに後悔してるのか、と疑問を口にした。
少なくとも一人は欲しかっただろうから、兄貴は産まれても良かっただろうけれど。