きみとぼくの、失われた時間
ドックンドックン。
嫌に鼓動が鳴った。
背筋にツーッと冷たいものが走って、俺の心臓を慄かせる。
気付けば、駆け出していた。
家路から脱線して街に向かうのは俺自身、此処が俺の知る街だと確かめたかったから。
片隅で家に帰るのがやけに怖かったんだ。
今、家に帰れば俺の内側で何かが決壊してしまいそうで。
街を確かめて、安心して、家に帰ろう。
その一心で俺は近場の商店街に向かった。
俺の地元の商店街は夜九時まで営業していることが多い、活気のある商店街だ。
きっと今も退勤したOLさんやリーマン等々で賑わっているに違いない。
「……、今日は定休日だったか?」
商店街に辿り着いた俺は、物の見事に静まり返っている商店街に絶句せざるを得なかった。
右も左もシャッター、シャッター、シャッター。
まるでシャッター通りだ。
なんで揃いも揃って店を閉めてるんだよ、商店街の皆さん。
今日は町内で定休日を設けたんですか?
恐る恐る商店街に足を踏み入れる。
いつもは活気付いている魚屋も肉屋も八百屋もオモチャ屋も、あ、母さんの好きな雑貨屋も閉まってる。
それだけならまだしも、どの店もシャッターを閉めて随分時間が経っているようだ。
店周りが小汚い。
配布されたチラシや空き缶、煙草の吸殻が無情に落ちている。
雑貨店ならまだしも、不衛生だと生鮮食品関連は不味いんじゃないか?
客の反感を買うって。
風に押されて転がってくる空き缶を軽くスニーカーの爪先で小突き、俺は目を白黒。
ワケが分からなさ過ぎて頭がオーバーヒートしそうだ。